「……なにか、凄い夢を見た気がするな」 そう呟いてシーツを取っ払い起き上がったのは、少し長めの金髪と鼻梁が整う美顔を持つ少年だった。 「――む」 清明に透き通ってきた意識が、微かな違和感を少年に訴えかけた。 「アギト」 彼女の名を呼んでみても、やはり返事は返ってこなかった。 「この部屋、こんな内装だったか?」 少年が昨夜泊まったのは、とある管理外世界のボロボロな安宿だったはずだ。 しかし今はどうだろう。壁紙は綺麗だしフローリング仕様の床はワックスでピカピカ。 (……もしや、私は何者かに攫われた?) 静かに状況を把握する。少年は所謂“次元犯罪者”と呼ばれる札付きである。 「しかし、身動きは取れる」 だというなら、鎖にでもバインドでも封印魔法の1つや2つで束縛されてしかるべき。 「この服と部屋のセンスは中々だが……増々わけがわからないな」 判断材料が少なすぎる。現状で状況把握は不可能。 感覚を研ぎ澄ませながら、ドアを静かに開いた。どうやら向こうはリビング。 (ふむ、2LDKといったところか) いい部屋だ。少年はそんなどうにも役に立たない情報を得て更に散策を続けようとリビングに侵入する。 「――っ!」 瞬間、少年は身を翻し疾風のように疾走する。 「ふぎゃ!?」 「答えろ! 貴様は何者だ! ここはどこだ! 何が目的だ!」 「ちょ! 先輩、何するんですか!? 痛い、痛いって!」 「……え?」 思わず、関節を決め込み組み倒した人物から発せられたその声に、少年は戸惑ってしまう。 けれど、“奴”が私のことを、“先輩”などと呼ぶわけがない。 そんなことは、今まで過ごしてきた世界が滅びてもありえない異常現象なのだから。 その顔は、その人物はやはり――。 「う”ぁ……!」 少年が目を盛大に見開く。 「もー! また寝ボケてるんですか? 勘弁してくださいよ“プレラ先輩”」 “起きていた”。 自分を先輩と読んだ人物、それは少年が生涯のライバルと決めていた強き者――。 「ヴァン・ツチダアアアアアァ!?」 “頑張って考えた格好良い私”というキャラの装いを粉微塵に崩壊させて、“先輩”こと“プレラ・アルファーノ”の絶叫は天高く轟いた。
『プレラは別次元世界でトラブったようです』
プレラ・アルファーノ、15歳。性別は男性。 そう、表面上は。プレラという人物はある意味、一種の仮面で本性を覆い隠している節がある。 ほぼ全ての人間には他人に対する“違う自分”を持っているという論理がある。 内面と外面が、かけ離れ過ぎていた。
――プレラ・アルファーノという人物を語る前に、少し昔話をしよう。 彼には出来のいい兄がいる。少年とは真逆で、勉学は秀逸で運動も卓越。 兄に悪意はない。誰にでも平等に優しくあるが故に――否、血を分けた唯一の弟だからこそ。 そんな不公平のアンバランスな兄弟だったから、彼らの両親の目は常に兄へ向けられる。
『どうしてお兄ちゃんみたいに出来ないの?』
両親に悪意はない。“出来の悪い駄目な弟”と差別意識があったわけでもない。 だけど、そんなことを利発の満たない子供が理解できるわけがないだろう。 ならせめて、違う舞台くらいには居場所があれば救いはあったのだろうが。 ノートを破られた、内履きを隠された、机に心ない文字を書かれたなんて――。 少年に対するイジメが少数、もしくは個人的な物だったのならまだなんとかすることも出来ただろうが、もはやそのイジメはクラス全体の“集団意識”にまで発展している。 イジメの事実を知った教師は『なんとかしてみせる』と少年を励ますものの、結局は口だけだった。 けれどある日、イジメられているという事態を少年の両親が知ることになる。 ――ひょっとしたら、この地獄が変わるのか。 少年はそんな淡い想いを、ちっとも自分を見てくれなかった両親に抱いた。
『――いい加減にしろ!』
でもやっぱり、蜘蛛の糸なんて容易く切れるものなのだ。
『抵抗しないお前が悪い!』
思わずキツイ言葉を浴びせてしまう。
居場所なんてどこにもなくて、必要とすらされなかった少年。 あるいは少年がもう少し優秀だったのなら。 あるいは少年がもう少し強かったのなら。 もう少し、もう少し、もう少し、もう少し、もう少しだけ何かが違っていれば。 もう少しくらい、人並みの人生を歩めたのかな? 最後にそんなことを考えて、少年は孤独にひっそりと――この世を去る。
果てさて、そんな少年を哀れに思った神のご慈悲か、それともそんな少年を愉悦に思った悪魔の悪戯か。
けれど懇願したその強さこそが、渇望したその優秀さこそが、その二つなんて比べ物にならないほどの本当の望みだった“居場所”をぶち壊すことになろうなど――少年はその時、知る由もない。
プレラが生まれ変わって、何の因果か前世の記憶を思いだした時。 この世界の父親は確かに真人間で立派な大人だ。仕事も世界の平和を守るという自慢に値する職業に就いている。 この世界の母親はそんな父親に愛想を尽かし、自ら腹を痛め生んだ子供ですら金で雇った家政婦に任せっきりで、遊び歩いて家によりつかなくなる。 この世界にも兄がいた。だけどその姿を見たことは一度もない。 だから食事などはいつも1人。前世では、時偶くらい家族で卓を囲ったりもしたけれど、今世では一度もないというのだから笑えない。 だというのに、まるで水のような味気なさを感じる理由は何なのか。 たった一人っきりの食卓を幾度も繰り返し、プレラは再び孤独に幼少時代を過ごした。 ――ここでもやはり孤独なのだろうか。 だけど、そんなものは杞憂だった。 『プレラ〜! ノート貸して〜、今の講義がわからなかったの』 ほんわかとした雰囲気で、愛らしさと優しさを併せ持つ少女、ポーラ。 『ああ、この愚姉、ずっと寝ていたんだ。プレラ、ノートを貸す必要なんて無いぞ』 明晰怜悧とした雰囲気で、それでも暖かい表情を浮かべる少年、ザート。 年上で双子の彼らは、何故かプレラに構ってくれて、良くしてくれた。 彼らと共にいることの安堵が、どれほど素晴らしいものだったか。
だが。
『ったく、あのガキと犯罪者ども、馬鹿みたいに騒ぎやがって……』 『まったくよ、少し可愛いからっていい気になって』 『むかつくな』
根底渦巻く嫉妬という悪意が、彼らに狙いを定めていた。 そんな彼が、犯罪者の経歴を持つ双子と仲睦まじく過ごしていれば、その目にはどう映るか。
『なあ、確か次は戦技実習だったよな……。アイツのデバイスを……』 『図に乗っていたみたいだから、お灸をすえてやりましょう』
非殺傷設定という、魔法の危険性を無くすシステムに慣れきった少年達が思いついてしまった、最悪の悪戯。
『あ、あああああああああああああ……』
地に伏せるは最愛の友達。 『怪我は無いか、プレラ……』 『よかった……プレラは、無事で……』 事切れる寸前まで、我が身を顧みずプレラの心配をしてくれた。 こうして、プレラは求め続けてきた居場所を失った。自ら望んだ力で、大切な居場所をぶち壊した。 それが、地獄の底を突き抜けた、深淵の入り口だとも知らずに。
それからプレラは数々の戦いに身を投じる事となる。 自ら終焉に向かうプレラ・アルファーノ、それが唯一無二の正しいことであると信じて疑わない彼の未来はきっと絶望しかなかった。 ヴァン・ツチダという強敵の存在。 ――ヴァン・ツチダに勝ちたい。ヴァン・ツチダに負けたくない。 いつしかプレラは彼に対してそんな感情を思い抱いていた。 そうして、長い月日の末、プレラはヴァン・ツチダに勝利した。 「あはははははははははははははははははははははははははっ!」 強くなった。これほどまでに自分は強くなった。 非殺傷設定というシステムがあろうと不幸な事故は起きる。 大切な友を殺したのはあくまで己の未熟であり、愚かさが原因。 自分自身の弱さから目を逸らし、自分の為だけに力を振るい、世界を救うなどと妄言を吐き、その実は自分の罪より逃げ回っていただけのちっぽけな奴。
それがプレラ・アルファーノという男。
だが、そんな弱き自分を覆い隠す仮面は砕けた。 これはそんな少年が、ヴァン・ツチダに勝利し、己の弱さを自覚した後――とある世界に住む知人を頼りに旅を続ける内に迷い込んでしまった
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コンコンコンと、金槌がリズムに合わせて振り下ろされる。 「――ってな感じで、先輩に今朝襲い掛かられまして」 「あはは、相変わらずだなプレラ先輩は」 関節技を決められた部分を擦りながらため息をつくヴァン。 ちなみに、2人の話題となっている当の本人はと言えば――。 (な、なぜ私はヴァン・ツチダやティーダ・ランスターと一緒になって管理局の屋舎の屋根を直しているんだ……?) 現状に理解が追いつかず、適当に穴の開いた屋根の一部を板と釘で修理しつつ。 「しかもその後も大変だったんですよ。“なぜ貴様がこんなところにいる!? 私を捕まえに来たのか!?”って大騒ぎで、結局一時間かけてなだめて引きずって来ましたからね」 「ああ、それで今日は遅刻したのか。しかし今日の先輩の寝ボケっぷりはいつもと桁が違うな」 どうやら、“この世界の”プレラは寝ボケ癖が酷いらしく、そんな奇行すら寝ボケていたで納得されている。 多少落ち着いたところで、ヴァンからなんとか現状の情報を聞き出せば更なる混乱に拍車がかかる事態が待っていた。 (……それにしても、この私が管理局員か) つい先日まで札付きの犯罪者として管理局と戦い続けてきた己が、今度は人員として管理局に属すことになろうとは。 (確かに、管理局で働く。私にはそういう未来も……) ……無くは、なかったのだろう。 (――ふっ、所詮は出来の悪い夢か。夢ならばとっとと覚めて欲しいものだな) けれどそれはもう過ぎた話。すでに終わった過去。自分で切り捨てた、違う可能性の中にしかない未来。 「って、先輩。笑ってないで手を動かしてくださいよ。全然進んでないじゃないですか」 「1人だけサボるのはずるいぞ、プレラセ・ン・パ・イ」 「む? ……そうだな。了解した」 この全ては夢なのだ。くだらない、夢。そうでなければこんな現実はありえない。
「問題ない。伊達に鍛えてはいないからな」 ジンジンと鈍い痛みが奔る、包帯を巻かれた手を振り上げてプレラはそう言う。 「夢のくせに痛覚があるとは……」 「夢? なんの話だ?」 「こちらの話だ……それとヴァン、敬語は止めろ。先輩もいらん、呼び捨てでいい。ティーダもな」 「え!? ……いや、でも階級とかありますし……」 「ならば命令だ」 「……わかったよ、プレラ」 「また急だな?」 「気分だ」 「気分ねぇ……あ、ヴァン。ついでに俺にも敬語はいいんぜ?」 「……それは考えて起きます」 ヴァンに敬語で話しかけれれると背筋に悪寒が奔る、とは言えないのでそう誤魔化す。 「……ところでヴァン。あれはなんだ?」 と、プレラはヴァンとティーダ、3人して軽く目を背けていた、目の前で繰り広げられる逃亡劇を問いただす。 「俺に聞かけれてもな……」 屋根を直して手を治療したその後……つまり現状を説明すると、彼らの元に急遽出動要請が駆け込んだのだ。 (何をやっているんだ、イオタ・オルブライト……) (奴の変態性は時の庭園にいた頃に嫌というほどに見たが、夢の中でも私の手を煩わせる気かあの馬鹿は) 夢とはいえ管理局員としての初任務がよもや下着ドロの逮捕とは。なんともやるせない話だった。 「あー、あいつ魔導師だ」 「ほんとだ」 (……ん? いま、まるでイオタが魔導師であることを始めて知ったような口ぶりをしたんだ? お前たちは確か知り合いだったと記憶しているが……この夢の中では、初対面という“設定”なのか?) そんな違和感に頭を傾げるプレラをしり目に、ヴァンとイオタは戦闘態勢に入っていた。 「まぁ、魔導師でも性犯罪に走る奴もいるだろうな」 「激しく低レベルですけどね。行きますか、ティーダさん、プレラ」 「だな、プレラとヴァンは足止め。俺が援護する」 「いつものフォーメーションですね。了解」 (……まずは、奴にお急を添えてからでいいか。しかし……先ほどセットアップしてから思っていたが) ――プレラは己の手の中に聳えるデバイスをまじまじ眺める。 (なぜ私のデバイスがシルバーブラッドに戻っている? 思い入れがあるといえば、あるのだが) とはいえ、あまり思い出したくもない過去の象徴とも言える以前の愛機の姿がそこにあった。
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「離せ! 離せー! わ、私が何をしたというのだ!? 私はただ、ベランダという檻の中で洗濯バサミという鎖から囚われの姫もといパンツを救出しただけだ! それが何故このような扱いを受けねばならない!? 我々はどうしても引き裂かれる運命だとでもいうのか!? くそぅ! なんだこのロミオとジュリエット状態! 確かに私はロミオのように世紀の美少年ではあるが!」 「変態一名、確保と」 一瞬だった。それはもう一瞬の圧倒劇だった。 「けど自首の勧告も施さないのにいきなり斬りつけるのはどうかと」 せっせとバインドでイオタを縛り上げるヴァンがプレラに向かってそう問う。 「……ふっ。お前のその甘さが、いつか命取りにならなければいいがな」 今日も絶好調だなープレラ先輩は、と口に出さないものの内心でため息をヴァンが吐いた瞬間だ。 「――今だ! ふはは! 甘い! チョコレートより甘いぞ諸君ら!」 「あ、しまっ……!」 どうやったかは不明だが、マジシャンがやるような縄抜けのようにスルっとバインドを解いたイオタ。 (あれは、転移の魔法陣! 馬鹿め、この私から逃れられるとでも思っているのかイオタ!) 火事場の馬鹿力とでも言おうか、イオタの逃げ足は相当のものだが騎士たるプレラが追いつけない程ではない。 「ヴァン、プレラ! 逃げろ!」 その言葉と、魔力反応を背後に感じたのはまったく同時であり、ヴァンとイオタが飛び退いたのもまた同時だった。 「――馬鹿な! この反応はまさか、次元震……!?」 かつて、幾度か体験したことのある危険にプレラは何よりも早く察知する。 「ノゥ! ヘルプミー! おまわりさーん、たすけてー!」 イオタの悲鳴、デバイスの警告音が合唱のように鳴り響く。 「さっきの魔法弾、次元反応弾かっ!!」 ティーダの解析と次元震の反応に驚愕するヴァン。 「知っているんですか?」 「ああ、お前の年齢なら知らないのか。10年位前に禁呪指定喰らった魔法だよ。ごく稀にだが転移魔法と反応して次元震を引き起こすって、ニュースになったんだ!」 「そ、そんなヤバイ魔法が! って、次元震なおも増大中!?」 「くそっ! ヴァン、下の連中を避難させるぞ!!」 (とはいっても――次元震が完全に発動すればこんな街の1つや2つ軽く吹き飛ぶ。避難なんて間に合うわけがない……!) 「プレラ、実はこんなこともあろうかとこっそり封印魔法を覚えてたなんてオチは?」 「……あったらもう使っている」 「……だよね」 タナトスから離反し、補助技も学ぶようになったプレラではあるがそのほとんどは幻影など戦闘を補助する技ばかり。 「なら俺が行く、2人はフォローお願いします」 ヴァンの提案に驚いたのは、ティーダだけではなく彼を熟知しているプレラも同じだった。 「……お前、封印魔法なんて持っていたのか?」 「ああ、削除しないで入れておいたんだ」 一度も封印魔法を使用している場面を見たことがなかったプレラである、驚くのは当然だ (ふっ、さすが我がライバルだ……が、ヴァンの魔力量を考えれば成功する確率は五分にも満たない……危険な賭けだぞ、これは) 「俺が次元震を封印します」 「無茶だっ! まて、それなら俺がやる!」 「いや、魔力量を考えれば私の方がいい」 慌てるように止めるティーダに、それを遮るプレラ。 「それこそ無茶ですよティーダさん。いかな才能があろうと、慣れない他人のデバイスで封印なんてプレラでも出来ない。まして、すでに次元震は始まっているのに」 「そ、それは……お前が無理に命を掛けなくても」 「おじさんが言っていたけど、俺達管理局職員は命を掛けて地上の平和を守らなきゃいけないって。時間も無いみたいですし、俺が行きます」 その言葉に迷いはなかった。その仕草に戸惑いはなかった。 (ヴァン・ツチダ……貴様は、やはり……) 知らずプレラは必死に拳を握りしめ、嫉妬でもない、哀れみでもない、複雑な思いが交差した眼差しでヴァンを見つめる。 「ヴァン……すまない」 「それは断る、ティアナは誰にもやらん!」 「それは残念。だったらプレラのプレミア限定品ジャンバーでいいや」 そんな軽口の応酬の後、2人はお互い顔を見合わせニヤリと笑みを交わし、「後は頼んだ」と言わぬばかりの表情でヴァンはプレラに微笑み――デバイスを掲げ、詠唱を呟く。 「閃光のごとく駆けよ」 『Flash Move』 瞬時に加速したヴァンは高速の弾丸となって次元震の中心へ向かっていく。 ゴッ、と――いきなりだった。何かに殴られたような衝撃に、ヴァンは屋上を二、三回転ほど屋上を跳ね、なんとか柵に掴まり停止する。 「ぶ、物理的な衝撃を伴う次元嵐……?」 口の中でやけに鉄っぽい血の味がして、足も捻っているのだろうか痛みというストライキでヴァンを引き止めた。 「ヘルプ、ヘルプミー! ああ、世界は私のような天災を見捨てようとするのか、そうか、これが世界の選択か! 私という特異点を修正力という名の運命が粛清しようというのだな! おのれ世界め! 許さん、絶対に許さんぞ虫けらども! じわじわと嬲り殺しに――ああ、嘘嘘! 嘘です! 謝る、謝るからどうかお助けを! 私が死んだら全米が泣くぞ!? それでもいいのか! オリコンチャート1位を3週くらい続けて独占してしまうぞおおおおおおぉ! 「……見つけた、あれが次元震の中心か」 ヴァンは放置を決め込んだ。そして見つけた黒い球体状の何か。 「ふぅ、ふぅ――――っ!?」 思わず、絶句した。なぜならヴァンの目の前には、次元震の圧力に耐え切れずにその身を崩壊させたコンクリートの一部が向かっていたから。 ここであのコンクリートに当たって気絶でもすれば確実に迎える結末は無駄死だ。 「やはり、お前ばかりにいい格好をされるのは許せん」 コンクリートを真っ二つに叩き斬った、プレラの声を聞いた。 「プ、プレラ!? なんで……」 「よく考えたらな、お前の魔力が足りないというなら私の魔力を分け与えればいいだけだ。それだけで成功率は跳ね上がる。魔法の使用事態は手助けしてやれんが、お前を次元震の衝撃くらいからなら守ってやれるしな」 「そういうことじゃない! 俺が失敗したら2人共死ぬんだぞ!?」 「ならば尚更だ。このまま一人だけ先にくたばって“勝ち逃げ”することだけは絶対に許さん」 「勝ち逃げって……」 「ふっ、まあそう悲観的になるな」 血まみれで、ボロボロで……何度も何度も見慣れた姿を晒すヴァンに、プレラは手を伸ばし。 「お前は、失敗などしない。保証してやろう、他の誰でもない――この私がな」 ただクールに笑ってみせた。 「……まったくもう、プレラ“先輩”は、本当に格好つけなんだから」 ヴァンは先輩の部分を皮肉のように強調して、差し出されたプレラの手を取った。 「封印!」 ただの一瞬で魔力がごっそりと持っていかれるのが傍で見てもわかる。 「封印、完了……」 「ふっ、よくやった。さすが我がライ」 安堵の溜息をつくヴァンを労ろうとプレラが声をかけたその刹那、ティーダの声が耳に届いた。 「ヴァン! プレラ! 気をつけろ!」 「えっ!?」 「なに!?」 2人は封印したはずの場所を見る。 「し、しまった!」 その悲鳴はヴァンの物だったのか、それともプレラか。
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果たしてこれは夢なのか? けれども、プレラはそれを否定出来ない。 彼らは皆、経験しているのだ。 起きたら違う世界に居た、死んだら違う人間になっていた、ふとしたら違う人生を歩んでいた。 (……金槌で手を打って、痛みを感じたときから――わざと考えないようにしていただけだ) わざと、夢だ夢だと……覚めない夢だと、思い込もうとしていただけ。 (……なぜ、私は認めたくないのだろう) わからない、わからないことだらけだ。 勝ち逃げだけはされたくなかったから。 (もしもこれが、本当に現実だったとしたら)
私は、元の世界に帰れるのだろうか?
(……まったく、珍しい夢だから、流されてみようと思ったのが運の尽きか……) まあ――なんにせよ。 「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に。この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」 その呪文と共に、魔法の光に包まれる幼き少女。 間違いなく、それは高町なのはとユーノ・スクライア。 (過去じゃねーか、ここ)
プレラの“寄り道”は、まだまだ始まったばかりのようである。
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――君は、人生をやり直したいと思うかい? 世の中にありふれた、もはや陳腐と呼んだところで過言ではないそんな質問。 タナトスに在籍していた当時の話だ。 「……」 そのようなことを、よもやこの御方から尋ねられるとは。 人生をやり直したいか、やり直したくないか。 「…………やり直したい、かと」 「だろうね」 あっけからんと盟主はそう言って、知恵の輪を再開し始めた。 「知恵の輪というのは、簡単な物を除けば解答までの手順は大抵が1通りしかない」 「……」 話が先の質問に続いているのかいないのか。 「その1通りの手順を見つける為に、1つの行程を紐解いて、次の行程へと赴く。間違えてはやり直し、間違えてはやり直し、ただひたすらに」 カチャ、カチャ、カチャ――ガチャ、と複雑に絡み合っていた知恵の輪が綺麗に分離した。 「――お見事」 そんなプレラの世辞に、煽てた所で新型のアームドデバイスしか出ないがなと呟いて盟主は彼に顔を向けた。 「人生をやり直したいと思うのは、知恵の輪で言えば解答の手順を間違えて手詰まっているからだ。しかし人生はやり直せない。手順を誤って間違えたままの、いつまでも解き明かせない知恵の輪を懐にしまい込みただ苛立ちを募らせる。それも――“何個”と。今の君のようにな」 「…………」 「失敗の数だけ、間違いの数だけ人は二度と解けない知恵の輪を増やし続けて、どれほど重荷になろうが持ち続けていく。それを解決する方法は二通りだ――わかるか?」 「……何らかの方法でやり直せないという定義を覆すか――“捨てるか”でしょうか」 「御名答。意外と頭が柔らかいじゃないか」 「光栄です」 「だが完全にやり直すというのは今だ机上の空論である時間魔法を駆使して、失敗した過去に“飛ぶ”くらいの方法しかない。だから現実として取れる方法は捨てることのみだ。忘れることで、飽きることで、見ぬふりをすることで――やっと人は知恵の輪から開放される――果てさて、プレラ」 ――君はこれから後、やり直したくともやり直せない知恵の輪を、いったいどうするのだろうね。
一度は主と仰ぎ、一度は敵と刃を向けた存在との会話をプレラは静かに思い出す。 (解けない知恵の輪、か……あの頃は、いつだって人生をやり直したいと思っていたっけ) 一度目だって、二度目だって。人生の程をやり直せたらどれだけいいか。 (それでも今は、そうも思わなくなったんだがな) 数々の人々と出会い、そして激戦の繰り返しを経て過去を変えたいと慮ることは極端に減った。 (っと、思い出に浸っている場合ではないな。まずは“あれ”を倒す方が先か。まったく――) ここが夢にせよ現実にせよ――“高町なのはが始めて魔法に出会った場面”に介入する妄想がよもや叶うとは思わなかったよ! プレラはデバイスを掲げ疾走しながら心中そう叫ぶ。 「――っ!? 起きたのかプレラ!」 疾走し自分の方へ向かってくるプレラにヴァンは気づいた。 「何を遊んでいるヴァン! その程度の相手、お前なら造作もあるまい!」 「いや無茶いうな!?」 確かに高町なのはに匹敵する魔力を持つプレラから見ればこの化物も軽く片付けることが出来る相手なのだろうが。 シルバーブラッドの切先に魔法の輝きが集結し、只ならぬ破壊力を宿したそれをプレラは化物に対し下段から天へ向けるように振り上げた。 「天剣龍牙!」 ――と、呼ぶことにしようとプレラが日々思いついたことを書き綴っているノートの一文に記されているのはここだけの話である。 しかし、この化物は打撃耐性を持っている為に瞬時に回復するはずなのだ――が、いくら待ってもその前兆がない。 「ふぅー……助かったよプレラ――えっと、そこの方」 「へっ!? わ、私ですか……?」 そうため息を吐いて地面にへたり込んだヴァンはプレラへ感謝を述べると同時に、今だ何が起きているのか理解しきれていない少女、高町なのはへ向かって呼びかける。 「申し訳ないんですが、封印を頼んでよろしいでしょうか? 自分は魔力が切れちゃって、もう1人は封印魔法……苦手なんですよ」 本当に申し訳ないと心苦しさに溢れる様子で、困ったように苦笑しながらヴァンは言って。
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「本当に助かりました。自分は時空管理局ミッドチルダ本局首都航空隊3097隊所属、ヴァン・ツチダ空曹です」 「私も同じく。名はプレラ・アルファーノ……准尉だ」 「え、えっと、私立聖祥大学付属小学校3年生、高町なのはです、えっと、その、はい」 「ええええ、ぼ、僕ですか。え、えっと、スクライア一族のユーノ・スクライアです」 「あ、いや、そんな畏まって名乗っていただかなくても……」 なのはが余裕を持って軽々封印を終えたあと、そんなこんなで4人は向い合って自己紹介。 しかし、話の流れがどんどんおかしくなっていくのはプレラにとって完全に予想外だった。 「あ、あの、それじゃあ、私も協力する」 というなのはの提案に対して。 「いえ、それには及びません」 「……ええ、ユーノさんの言う通りです」 と、ユーノとヴァンが断ったのだ。 (……な、何ぃ!?) その驚愕を表情に出さなかったのは、常にクールに振舞えた方が格好良いなと考えていたプレラの鍛錬の賜物だろう。 「で、でも、でも、プレラさん以外は怪我をしているし……」 「いえ、怪我はもう大した事はありません。それに、これは本来なら僕達の世界の問題です」 「それを言ったら此処はなのはの世界だよ」 「はい、だからこそ、これ以上なのはさんを巻き込めないんです」 「そんな、私は全然平気だよ」 「すいません。でも、さっきだって危うくなのはさんに怪我をさせるところでした。ヴァンさんやプレラさんがいなければどうなっていたか……助けてくれてありがとうございます。なのはさん、巻き込んでしまって申し訳ありませんでした」 「ユーノくん……けど、さっきは封印魔法が出来ないってヴァンくんが」 「その件を含めて、自分からももう一度お礼を言います。本当にありがとうございました。けど、幸いにもプレラは管理局でも有数の才能を持つ魔導師なんですよ。封印魔法だって少し学べば必ず出来るようになりますし、自分も魔力が回復すれば可能です。だから安心して後は自分達に任せてください」 「ヴァンくん……」 待て、待て待て待て。なんだこの流れは。 『待てヴァン、何を考えている? このままでは高町なのはが魔法に関わらなくなるぞ!?』 『けど管理外世界の一般人を巻き込むわけにはいかないだろう? そういう規則だってあるし』 『そ、それはそうだが……え、そうなのか? な、ならフェイトはどうする!? フェイト・テスタロッサは高町なのはがいなければ救われることは……』 『……なんでそこでフェイトが出てくるんだ?』 『……何を言っている。少し後でフェイトはジュエルシードを回収しにこの世界にやって来るだろう』 『え?』 『え?』 何故か頭に疑問符を浮かべて話の通じないヴァンに、プレラもまた頭に疑問符が浮かんでしまう。 「そうだよね、ごめんね。3人はお仕事なのに我侭言って」 「いえ、僕の方こそ巻き込んでしまって申し訳ありませんでした」 「あ、これ返すね」 「あ、いえ、これはっ! 貴女に差し上げます」 「ううん、これは皆さんに必要でしょう。じゃあね、さようなら」 ヴァンと話し込んでいる内に、なのはが納得して帰ろうとしていることに気づいた頃にはもう手遅れ。 (ま、待ってくれ高町なの――) 呼び止めようと差し伸べかけたプレラの手が止まる。なのはの目元に浮かんだ一滴の雫を見てしまったのだ。 (私がいたから、こうなったのか?) ズキズキと痛む胸を抑えて、プレラはただ静かに寂しそうな高町なのはの背中を見送った。
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「はああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!? フェイトはプレシアは医者を目指して今は医師養成学校に入学している!? というかそもそもアリシアが生きていて、アリシアがフェイトを産んでるだと!?」 「な、なんでそんなに驚くんだ?」 「ば、馬鹿な……なんだそれは」 そしてなんなんだ、この世界は。 (そんな事情があれば、フェイトはおろかプレシアがこの世界に来るわけがない……) 歴史が根底から変わってしまってる。 確かに、幾つもの選択肢によって無数に分岐する“パラレルワールド”と呼ばれる世界には……。 (……“こんなはずだった世界”) いつだったか、それはプレラが思ったことのある空想の世界だった。 「というかそもそもこの話はプレラから聞いたんだぞ? ほらかなり前、休暇を取って見に行ったってさ。この世界のフェイトは幸せそうで良かったって、あんな嬉しそうに言ってたじゃないか」 「……そ、そう……だった、な……」 その歳で記憶障害はやばいって――とジョークを飛ばすヴァン。 (フェイトは今――“幸せ”なのか) プレラにとって、フェイトはある意味で特別な存在だ。 家族がいるのに、仲良く出来ない境遇が……家族に疎まれる環境がどうしても自分と重なってしまって。 家族とすれ違ったままの“自分”を――間接的でも助けたかったのかもしれない。 「ふー。いいお湯だった」 そんな言葉と共に2人の元へ体を濡らして戻ってきたのは、個室に備え付けれられている風呂で汚れを落としたユーノだ。 「お、戻って来た。なら次は俺が浸からせて貰おうかな……いいか? プレラ」 「あ、ああ。構わんぞ。先に入るがいい」 ちなみに、彼らが今居る場所は海鳴市の、予約をしなくても簡単に取れてしまうようなとある安ホテルである。 「しかし、プレラが幻術とこの世界の通貨を持っててホント助かったよ」 「危うくサバイバル生活だったからね」 「備えあれば憂いなしとはこのことだな」 原作に介入する気が満々だった過去の自分に感謝しなければ、とプレラは思う。 お金とか、どうするの? ということである。 プレラは傭兵もどきをやっていた時代にサバイバル生活は経験しているし出来ないこともない。 札束で。 いったいどこで手に入れたのだろう。 けれどそのお陰で食べ物を得る為には狩猟をしなければ、というサバイバルは回避する手筈となった。 ここでも活躍したのはプレラである。シルバーブラッドの中に1つだけ幻術魔法がインストールされていたのだ。 それもなんとか突破でき――ようやく現状に至るのだった。
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「封印を完全に習得するまでもう少しといったところだな。ちょっと休憩するぞ」 そう言いながら周囲に浮かべた魔法陣を消して、プレラはシルバーブラッドを待機状態に戻した。 「魔力量が足りないのもあるけど、封印魔法は俺にとっちゃかなり高度な技術なのに。凄いな」 「ふっ、そう褒めてくれるな――世の中には、魔法に目覚めて数分で封印魔法が使えるようになる女の子だっているのだから……」 「……そうだな」 少し落ち込むプレラとヴァンだった。 しかし、ユーノ・スクライアが私とは違うベクトルで並ならぬ才能を有しているのは知っていたが『なるほどなるほど、なるほどー』とシルバーブラッドの複合式をちょっと眺めただけで術式の改造が出来てしまうとは、実に末恐ろしいな――とプレラとヴァンが思ったことは内緒だ。 (……フェイトのことや元の世界へ帰ることは後回しにするとしてだ……後でユーノに私とヴァンの術式の改造も頼んでみるか。技の構成が簡単な分、貧弱すぎる。それにバリアジャケットも変えなければ) プレラは自身のバリアジャケットをちらりと眺めた。 (これでは下半身しかロクに守れん。格好良いことは格好良いが、実戦向けではない。過度な装飾だって無意味にリソースを食うだけだしな……) と、以前のこの時代のプレラなら決して考えなかったであろうことを思慮しながら、部屋に備え付けられている冷蔵庫を開ける。見事にミネラルウォーターしか入っていない。 「ヴァン、ユーノ。飲み物を買いに行くが何か飲むか? 奢ってやろう」 「あ、それだったら僕が買いに」 「いや、だったら皆で買いに行こうぜ……てかプレラ、幻術使わなくてもいいのか?」 「バレないだろうさ。監視カメラだって見当たらんし、無駄な魔力を消費したくはないのでな」 というわけで、全員で廊下にあった自販機の前に移動。 「さて。何にしようか……」 「ヴァン、リンゴジュースってある?」 「なっ○ゃんのならあるな。俺は……これで」 リンゴジュースのボタンを押し、次に自分の分とヴァンがボタンを押したのは、かなり甘めのコーヒー牛乳だった。 「ハーハッハッハ! なんだ、ヴァンはコーヒー牛乳かぁ? どうやら私はお前を過大評価していたようだな! 男ならばブラック以外にありえん!」 「いや、だって糖分欲しいし。ブラックは苦いだけだと思うけどなぁ」 「甘い、お前はそのコーヒー牛乳よりも遙かに甘いぞヴァン。大体、コーヒーに砂糖や牛乳といった不純物を入れてしまってはコーヒー豆独自の味わいが薄れてしまうではないか。糖分が欲しい? 馬鹿め! コーヒー豆そのものにはちゃんとした甘みがあるのだ! それを感じ取れんとは、ヴァンもまだまだオ・コ・チ・ャ・マだな! フハハハハハ!」 言いたい放題だった。 「けど缶コーヒーだよ?」 「ふっ、まあ? 世の中には缶コーヒーなんて飲めるかと嘲笑うニワカコーヒー通な輩もいるが、日本の缶コーヒー製造技術を舐めてはいけないな。大量生産品のインスタントとはいえ、メーカーにもよるがそこに妥協は存在しない。偽物が本物に敵わない道理がないのと同じだ」 プレラはボタンを押しながら長々とコーヒーを語る。 「ゴクっ、ゴクっ、ゴクっ」 そんなことを呟きながらグイッと缶コーヒーを呷って……。 「――ブフォァ!?」 むせた。 吹いた。 そしてヴァンの顔面にブチ撒けられたの三連コンボ発動だった。 「熱っうううぅ!?」 ホットでなければヴァンも苦しむことはなかったろうに。 「うわぁ!? ヴァンさん!? プレラさん!? だ、大丈夫ですか!?」 「何すんだプレラァァ! マジで熱かったぞ!?」 「ごほっ、ごほっ! ……ナニコレニッガ……ごほ!」 「今、苦いって言いませんでした!?」 「飲めないなら無理して飲むなよ、プレラ……」 「ち、違う! たまたまだ! たまたま肺に入りそうになっただけだ! ……な、なんだその哀れみ眼は!? ち、違うぞ! 私は飲めるからな! 私はブラックが大好きなんだからな! 本当なんだからなぁ!?」
プレラのキャラ作りはどこえやら。そんな3人のやり取りは、夜が開けるまで続いたとか。
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「ほう、ここが海鳴か……」 一方、真夜中の海鳴市を徘徊する1つの人影があった。 「ジュエルシード、そして“貴様”がここに来ていることはわかっているぞ……くくくっ、ミッドから離れれば逃げ遂せるとでも思っていたか……」 黒いロングコートの男は笑う。ただただ、小さく小さく。 「貴様の躰は、“我々”があの大いなる力を得る為の器として使わせて貰うぞ。覚悟するがいい……」 さながら哀れな獲物を前にした狩人の如く――。 「“ヴァン・ツチダ”――!」 ――笑う。
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